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子供は褒めて伸ばす

オーストリアの心理学者、アルフレッド・アドラーは、子どもを育てるときに親や教師が注意しなければいけないことの一番に「子どもの勇気をくじいてはいけない」ことを挙げています。子どもの努力が報われなくても親が絶望してはいけないし、子どもが消極的だからと言って失敗を予想してはいけない。才能がある子どもと才能がない子どもがいるという迷信を信じてはいけない。個人心理学を確立したアドラーは、心理学は子どもたちに勇気と自信を与えるために使うべきだと主張しています。


■相互に尊敬する、尊重する“リスペクト”の大切さ

 サッカー界では相手を尊敬するという意味の“リスペクト=RESPECT”という言葉を使って、フェアプレーやプレイヤーズファーストの大切さを広める運動をしています。このリスペクトという言葉に、実は良い親子関係を構築するための重大なヒントが隠されています。心理学では「子どもは自分に価値があると思ったときにだけ勇気を持てる」という考え方があります。サッカーでも、ポジションを与えられ、何かひとつの活躍、ワンプレーがきっかけで、自信と勇気を持ってプレーするようになり、それまでとは別人のような成長を遂げる選手がいます。子どもにとって自らを認めてもらえることは何物にも代え難い、大きなモチベーションになるのです。

 そこで重要なのが、親が子どもを対等に扱い、相互に信頼関係を築くことです。RESPECTはRE=ふたたび、SPECT=見るという意味を語源に持ちます。ふたたび見る、振り返るという意味が「尊敬」を表すリスペクトの本来の意味です。ありのままの子どもを見る。新たに振り返って見る。しっかりと“見る”という行為が相互の尊敬、尊重、そして信頼につながるのです。子どもの適切な面をしっかりと見てあげること。尊敬されたいのであれば、しっかりと子どもたちの方を向き、彼らを尊重すること。

「言うことを聞いてくれない」「考えていることを話してくれない」・・・。

一方通行の思いでは気持ちは決して通じませんし、行動が変わることもないでしょう。


■褒めて伸ばす!褒めれば伸びるは本当か?

「褒めて伸ばす」は最近のトレンドになっている教育法のひとつです。叱ったり体罰を与えたりすることはむしろ逆効果であることはいまや常識として捉えられています。しかし、「褒める」ことも一歩間違えると危険だということは、あまり知られていません。児童心理学では「褒め方」について、いくつか注意書きを添えているのです。

「すごかったね。えらかったね。シュート決めてかっこよかった」褒めるという行為は大体の場合ポジティブな気持ちにさせます。しかし、子どもが「褒められるために」行動をするようになると、これは悪影響になり得るというのです。また、心理学では「褒める」という行為が上下関係を前提にしていると考えます。上から目線で褒めたとしても子どもはいつか「お母さんサッカー知らないくせに」「お父さんだってできないくせに」と、上から評価されることを嫌うようになるそうです。言葉を換えれば子どもを「おだてて」なんとか言うことを聞かせようとしたことが誰にでもあるのではないでしょうか。



■褒めるのではなく勇気づける 鍵は対等な関係

 さて、ではどんな声がけが適切なのでしょう? 言葉の違いと言えばそれまでですが、心理学では褒めるのではなく「勇気づける」ことを推奨しています。対等な立場に立って、サポートをする。「エライね」「お利口さんだね」よりも「ありがとう」「助かった」という言葉が、子どもの心を動かすのは言われてみればしっくりくることです。

 FC東京、ユース年代の日本代表監督を歴任した大熊清さんがカバーリングに行った選手やチェックに行った選手に「サンキュー○○(選手の名前)」と大声で叫ぶ姿が話題になったことがありますが、確かにサッカーには身体を張った選手、がんばった選手に「サンキュー」と言える文化がすでにあります。「行けー」「よくやったー」よりも「サンキュー」。ピッチサイドからお母さんがそんな声をかけたら、子どもたちも同じ目線で、一緒に戦っている気持ちが高まり、お母さんをより身近に感じられるのではないでしょうか。


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